雑記帳

沖縄と民俗と言葉と本と

5月28日

 

 毎週火曜日は授業を受けて、放課後言語交換をしているうちに1日が終わってしまう。

 

 卒論の題目を決めたら、残りの留学生活は今度こそ中国語に集中すると決めていたのに、授業と言語交換の間のわすがな時間、気がついたら日本語の本を読んでしまっていた。あれだ、台湾大学図書館には幸か不幸か日本語の本が多すぎる。勉強しようと思って机に向かうまでの間に、毎回大抵1冊は手に取ってしまっている。なら自習室に行けば?という話でもあるんだけれども、だって自習室の椅子硬いんだもの!!

 

 今日読んでいたのは『本のお口よごしですが』という、古本屋の店主によるエッセイ。もはや民俗学の本でもない。さすがに勉強時間に入れるのはやめた。

 

 どうしてこういう本が台湾大学の図書館にあるかは分らない。でも、古本屋を営むことに憧れている私にとっては魅力的な本だった。本の市場価値のこと、保存のこと、読書術等々、本にまつわる色んなことが書かれていて、一つひとつ共感したり、感心しながら読んだ。

 

 物心ついたころから私は、本が好きだった。本から広がる世界が好きだったともいえる。お小遣いがたくさん貰えていたわけでないから、買うのはいつも古本だった。古本から前の持ち主の痕跡を見つけるのが特に好きだった。どこに線をひいてるのか、どんなメモを残しているのか、はたまた前の持ち主かつけたページの折り目を見ながらどうやって読まれたのかを考える。

 

 難しい学術書を読む時は、前の持ち主の方が自分より賢いだろうとの前提のもと、線がかれているところこそ大切なのだろうと思っていた。ただ、最近は各々それぞれの関心に基づいて読むのだから、誰かが線をひいてるからって大切とは限らないなあと感じている。「読む」と「ただ読む」ことには大きな隔たりがあるのだということを、大学に入って叩き込まれている気がする。どこまで出来ているかは分らない。

 

 

 そのあとは、言語交換という名のおしゃべり。最初の頃はほとんど日本語で話してたのに、今日なんて中国語の容赦ないスピードについていけた!喜び!!

 話題はルームメイトのこと。私のルームメイトもなかなかの困り者だけれども、話を聞く限り友だちのルームメイトはさらに凄い。公主病(お姫さま病)だって言っていた。グーグルを使えないとか、メキシコからの帰国子女なのに中南米ラテンアメリカの違いが分らないとか、王朝の年代を間違えたとか、たくさんの愚痴を聞いていたけど、色んな学生が居るなあと思う一方で、友だちのストレスの溜め方も台湾大の学生っぽいなあと思った。私は相部屋の人が平安時代奈良時代を間違えても多分気にならないはずだから。

 

 留学生は一人部屋か二人部屋のどちらかに割り当てられるものだけれども、基本的に台湾人学生は4人部屋だからさらに苦労は絶えないだろうなあと。

 

 「なぜ、日本の大学の寮はたいてい一人部屋?」と聞かれたけど、うまく答えられなかった。うちの大学の場合、学生運動の影響で急遽ひとり部屋が作られたと聞いたけど、他の大学もそうなのだろうか。(うちの大学は、なんと3人以上の集まりには集会届が必要だったらしい!)

 

 夜はこの日記をまとめて書いていたら、良い時間に。深夜から明日の小テストの勉強をするはめになった。

 完全に優先順位を誤ったようにも思うけど、今の私は日々を書き記すことを大切にしたいなとも思っていて。愚痴もあるし、明るいだけの留学生活ではない。今日のような特筆するようなことは何もない日もある。でも、私にとっては何でもない日もぜんぶ全部大切なんだと思う。全部は覚えていられないから、ここに書く。

 

 台湾への交換留学、単位の心配をしなくて良いこともあってだいぶ自由にすごしているけれど、ぽかんと時間が与えられて気づくのは、私は本が読めて文章を書いて暮らせるのなら結構満足できるということだ。留学が終わっても、そういう風に暮らしていきたいし、そういう風に過ごせるように努力しよう。